NC旋盤のプログラムを学び始めると、必ず目にするのが「G96」と「G97」です。
どちらも主軸回転に関するGコードですが、
- G96とG97の違いがわからない
- どちらを使えばいいのかわからない
- なんとなく先輩と同じプログラムを書いている
という方も多いのではないでしょうか。
実は、G96とG97を正しく使い分けることで加工品質の向上や工具寿命の延長につながります。一方で、使い方を誤るとビビりや工具破損、ワーク不良の原因になることもあります。
この記事では、G96とG97の基本的な違いから、現場での使い分け、プログラム例、樹脂加工での注意点までわかりやすく解説します。
G96とG97の違いを簡単にいうと「回転数の制御方法」
G96とG97の違いは、主軸回転数をどのように制御するかです。
G96は定周速制御(切削速度を一定に保つ)
G96は「定周速制御」と呼ばれる機能です。
切削速度(m/min)を一定に保つため、ワーク径に応じて回転数が自動で変化します。
例えば外径100mmから20mmまで削る場合、径が小さくなるにつれて回転数が上昇します。
常に適切な切削速度を維持できるため、安定した加工品質を得やすいのが特徴です。
G97は定回転制御(回転数を一定に保つ)
G97は「定回転制御」です。
指定した回転数(rpm)を維持し続けます。
ワーク径が変化しても回転数は変わらないため、プログラムがシンプルで扱いやすいのが特徴です。
穴あけ加工やねじ切り加工などでよく使用されます。
まずは比較表で違いを確認しよう
| 項目 | G96 | G97 |
|---|---|---|
| 制御方法 | 定周速制御 | 定回転制御 |
| 指定値 | m/min | rpm |
| 回転数 | 自動変化 | 固定 |
| 面粗度 | 安定しやすい | 変化しやすい |
| 工具寿命 | 安定しやすい | 変化しやすい |
| 主な用途 | 外径加工・端面加工 | 穴あけ・ねじ切り |
G96(定周速制御)の仕組みとメリット・デメリット
ワーク径に応じて回転数が自動で変化する
G96では切削速度を一定に保つため、ワーク径が小さくなるほど回転数が上がります。
例えばG96 S100の場合、周速100m/minを維持するようにNC装置が自動計算を行います。
面粗度や工具寿命が安定しやすい
切削条件が安定するため、
- 面粗度の向上
- 工具摩耗の均一化
- 加工時間の短縮
といったメリットがあります。
特に外径仕上げ加工ではG96が選ばれることが多いです。

φ100以上の大きなワークの場合は外側と内側で結構変わってきてしまうのでG96を使いますが、小型の場合は径の差があまり無いためG97を使うことが多いです。
回転数は800~1200rpmあたりがデフォルトです。
中心付近で回転数が上がりすぎるリスクがある
径が小さくなるほど回転数は上昇します。
例えば周速100m/minの場合、
| ワーク径 | 回転数 |
|---|---|
| φ100 | 約318rpm |
| φ50 | 約636rpm |
| φ20 | 約1591rpm |
| φ10 | 約3183rpm |
このように中心付近では急激に回転数が上昇します。



個人的には2000rpm超えてからのキュイイイイインっていう音に恐怖を感じます
G50で最高回転数を制限する理由
G96を使用するときは、必ずG50とセットで使用するのが基本です。
G50 S2000
G96 S200 M03
上記の場合、周速制御を行いながら最高回転数を2000rpmに制限できます。
G50を設定しないと回転数が異常に上昇し、工具破損や事故につながる危険があります。
G97(定回転制御)の仕組みとメリット・デメリット
常に同じ回転数で加工するコード
G97では指定した回転数を維持します。
G97 S1200 M03
上記なら常に1200rpmで回転します。
プログラムがシンプルで扱いやすい
初心者でも理解しやすく、加工条件の管理もしやすいため、多くの現場で使用されています。
径が変わる加工では切削条件が変化する
ワーク径が変化すると実際の切削速度も変化します。
そのため、
- 面粗度のばらつき
- 工具寿命の変化
が発生する場合があります。
どんな加工でG97が使われるのか
主な用途は以下の通りです。
- ドリル加工
- センタードリル加工
- タップ加工
- ねじ切り加工
- 突切り加工
G96とG97はどう使い分ける?現場で多い加工別の判断基準
外径加工はG96を使うことが多い
外径加工ではワーク径が変化するため、G96を使用することで常に適切な切削速度を維持できます。
仕上げ面も安定しやすくなります。



先述した通りφ100以下の小型のワークを加工することが多かった私はG96の方がなじみ深いです。
穴あけやセンタードリルはG97が基本
ドリル加工は工具径が一定です。
そのため定回転制御のG97が一般的です。
突切り加工でG96を使う場合の注意点
突切りでは中心に向かうほど回転数が上昇します。
G96を使う場合は必ずG50による制限を行いましょう。
樹脂の場合は勢いつけすぎると完成した製品がぶっ飛びますので、やはりG97がおすすめです。
ねじ切り加工でG97が使われる理由
ねじ切りでは主軸回転と送りを同期させる必要があります。
回転数が変化すると精度に影響するため、多くの場合G97が使用されます。
G96とG97のプログラム例を比較してみよう
G96を使用した外径加工プログラム例
G50 S2000
G96 S200 M03
G00 X52.0 Z2.0
G01 X50.0 F0.2



回転数は2000がMAX
主軸は正回転で周速200m/min
スタートはφ52、Z0(仕上げ代)から2mm離れた場所から
φ50のところまで送り0.2で進む
というプログラム
G97を使用した加工プログラム例
G97 S1200 M03
G00 X52.0 Z2.0
G01 X50.0 F0.2



回転数は変わらず1200。主軸は正回転。
スタートはφ52、Z0(仕上げ代)から2mm離れた場所から
φ50のところまで送り0.2で進む
というプログラム
回転数がどのように変化するのか具体例で解説
G96では径が小さくなるにつれて回転数が上昇します。
G97では加工中も常に1200rpmを維持します。
この違いが加工品質や工具寿命に影響します。
G96でよくあるトラブルと対策
回転数が急上昇して危険になるケース
G50未設定が最も多いトラブルです。
必ず回転数制限を設定しましょう。



本当に危ないです。
ワークを緩めにつかんでいた場合飛ぶこともあります。
ビビりや異音が発生する原因
回転数上昇によって機械剛性や工具突出しとのバランスが崩れる場合があります。
- 工具突出しを短くする
- 切込み量を見直す
などの対策が有効です。
樹脂加工で溶けや変形が起こる理由
樹脂は熱に弱いため、回転数が上がりすぎると、
- 溶け
- 変形
- 寸法不良
が発生しやすくなります。
安全に使うための設定ポイント
- G50を設定する
- メーカー推奨条件を守る
- ワーク材質に応じて周速を調整する
これらを徹底しましょう。
MCナイロンやジュラコン加工ではG96とG97どちらを使うべき?
MCナイロン加工でのおすすめ設定
私の経験では、MCナイロンの外径仕上げではG96を使用していました。
(ワークサイズが大きい場合や綺麗な仕上げを求められる場合)
ただし高回転になると発熱しやすいため、G50で回転数を制限することが重要です。
ジュラコン加工でのおすすめ設定
ジュラコンは切削性が良い反面、バリが発生しやすい材料です。
仕上げ面重視ならG96、安定性重視ならG97を選ぶケースもあります。
アクリルやテフロン加工で注意したいこと
アクリルは熱による割れやクラックに注意が必要です。
回転数が早いと欠けのリスクが上がりますので回転数を落としてG97推奨です。
ただ遅すぎても透明度が出ないので調節が必要です。
テフロンは柔らかく変形しやすいため、高速回転には注意しましょう。
初心者が覚えておきたいG96・G97運用のコツ
まずはG50をセットで覚える
G96とG50はセットと考えるのがおすすめです。
加工径の変化を意識する習慣をつける
加工中に径が変化するかどうかを考えることで、適切なコード選択ができるようになります。
工具メーカー推奨条件も確認する
工具メーカーの推奨周速や送り条件を確認すると、より安定した加工が可能です。
G96とG97の違いに関するよくある質問
- G96とG97は途中で切り替えてもよい?
-
問題ありません。
荒加工はG97、仕上げ加工はG96という使い方も一般的です。 - G96を使わずG97だけではダメ?
-
加工自体は問題ありません。
ただし外径加工では切削条件が一定にならないため、面粗度や工具寿命で不利になることがあります。 - 初心者はどちらから覚えるべき?
-
まずはG97から理解するのがおすすめです。
その後、G96とG50の関係を学ぶと理解しやすくなります。
まとめ
G96とG97の違いは、主軸回転数の制御方法にあります。
G96は定周速制御、G97は定回転制御です。
外径加工ではG96が有利な場面が多く、穴あけやねじ切りではG97が一般的です。
また、G96を使用する際はG50による最高回転数制限が欠かせません。
NC旋盤の加工品質や工具寿命を安定させるためにも、それぞれの特徴を理解し適切に使い分けることが重要です。


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